羽田発着枠の配分から見える国土交通省の考え

CC BY David McKelvey
CC BY David McKelvey

羽田空港の拡張に伴う発着枠の配分が先日発表されました。
これは2010年10月から半年間の分で、年間2.7万回分になります。

配分の内容としては、JALよりもANAが多くなっており、新規航空会社には優先的に配分が行われています。

今回の配分ではJALとANAで差がついたのですが、その配分を評価する方法を見ると国土交通省が航空会社に求めるものが見えてきます。
 

評価項目 JAL ANA
 
1 利用者利便の向上の観点からの評価項目
 運賃水準の低廉化の努力
    旅客キロ当たり旅客収入が過去5年間で低下していること × ×
 安全の確保
    乗客の死亡を伴う事故が過去5年間で発生していないこと
 全国的な航空ネットワークの形成、充実への貢献
  全国規模での航空ネットワークの形成、充実への貢献
    低需要路線の便数が過去5年間で増加していること
    ナイトステイを実施している空港の数が過去5年間で増加していること ×
  羽田空港と地方の空港との間の路線の形成、充実への貢献
    羽田空港の全路線便数に占める路線以外の路線の便数の割合が
    50%を超えていること
    前回に配分を受けた発着枠数に占める路線以外の
    路線にしようしている発着枠数の割合が50%を超えていること
 
2 航空会社の効率的な経営の促進の観点からの評価項目
    旅客キロ当たり営業費用が過去5年間で低下していること × ×
    従業員1人当たり営業収益が過去5年間で増加していること ×
 
3 発着枠の効率的な使用の観点からの評価項目
    羽田空港の1発着枠当たりの輸送人員が過去5年間で増加していること     ×     ×
 
4 その他
    行政処分を過去5年間受けていないこと × ×

 

1 利用者利便の向上の観点からの評価項目 ではまず、旅客キロ当たり旅客収入の低下ということで利用者にとって低価格で飛行機を利用できるように促進しています。この項目の評価はJAL,ANA共に×で価格は下がっていません。価格で考えれば新規航空会社のほうが安く、今後さらに枠が拡大していくことが考えられます。ただ、ビジネスクラスなどのちょっと高くても快適に移動したいという人の需要もあるので、単純に旅客キロ当たり旅客収入で評価するのは無理があるのではないかと思います。

航空ネットワークの形成、充実では、地方空港の利用促進がはかられ、今回JALとANAで差ができた大きな理由となったナイトステイの実施も重視されています。JALの再建問題では、地方の赤字路線を無理に維持したことも破綻危機の大きな理由になっているので、今後はこの評価の仕方は変わってくるかもしれません。また、羽田発着の全路線の50%を地方空港の路線に、ということからは、航空会社は羽田と新千歳や福岡などの幹線だけを飛ばしていれば利益を出しやすいということがわかります。よって、羽田の枠を維持しつつ幹線に大型機、地方路線に小型機を飛ばす流れが拡大していくのではないかと思います。

2 航空会社の効率的な経営の促進、についてはなぜ国土交通省が民間の会社に対してこういう評価をするのかが疑問です。費用を抑えて収益を上げようとするのはどこの会社でも当然のことなのに、ちゃんとできてないと枠をあげないよというのも変な話です。また、日本においては羽田の発着枠が航空会社の利益を大きく左右するので、会社の経営効率によって発着枠に差ができるのであれば、航空会社間の差がますます大きくなっていくでしょう。なのでこれはあまりいい評価の仕方とは言えないのではないかと思います。
一人あたり営業収益の評価でJALは○、ANAは×なのは意外でした。実際にそうなのかもしれませんがJALの現状を考えると評価方法は妥当とは言えないと思います。今回の配分について、毎日jpによると「日航の経営状況は無関係」(航空事業課)らしいのですが、無関係というか評価基準には入っていて、その評価には経営状況が反映されていないというおかしなことになっています。

3 発着枠の効率的な使用の観点からの評価項目、では1枠あたりの輸送人員の増加が評価されていますが、JAL,ANA共に機材の小型化が促進されていて今後もこの流れは続くでしょう。国土交通省としては全体の輸送量を増やして機材も大型化がいいようです。
 

まとめ

国土交通省は次のことを航空会社に望んでいるといえます。
・運賃が安い
・安全
・地方空港の利便性の促進
・航空会社の経営状況がよい
・日本全体の輸送実績を増やす
・悪いことをしない

全体的な意図はなんとなくわかるのですが、中にはそれは航空会社じゃなくて国土交通省の仕事じゃないの?と思うような部分もあり、全体としては国土交通省とJAL、ANAの関係というか、立ち位置がなんかよくわからないものとなっています。
(実際にはこんな評価方式は後付で、内々に話をして配分を決めてるんだと思いますけどね・・・)

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。