理想的なハブ空港を作るための9つの条件

CC BY_NC Telstar Logistics
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 日本の政治が与党民主党へと変わり、いままで動きがにぶかった様々な問題が動きだしそうな気配をみせています。
空港政策もそのうちの一つで、今後の空港政策に大きな変化が現れそうです。
中でも羽田、成田のハブ化政策は今までなかなか結論が出なかった難しい問題ですので、今後それぞれの空港をどうしていくべきか考えてみようということで、まずは理想的なハブ空港とはどういうものなのかということについて考えてみました。

しかしその前に、そもそもハブ空港とは?ということなのですが、

ハブ空港とは

 ハブ空港とは、一言で言えば乗換えのための空港です。
飛行機は本来は出発地の空港から目的地の空港まで直線的に移動できるものですが、場所によっては直行便がない場合があります。
例えば、地方空港からニューヨークに行きたいと思っても直行便がないので、まずは成田空港に移動してから成田~ニューヨークの便に乗り換える必要があります。
この場合の成田空港のような空港をハブ空港といいます。また、ハブに対してそこから分散する地方空港のような空港をスポークといいます。
 
 

 さて、本題の理想的なハブ空港を作るための条件なのですが、これらの条件は絶対に必要というわけではなく、あくまで理想です。各条件については、二つの似たような空港があるとき、旅客、または航空会社の視点から見て、1つ1つの条件が違えばどちらの空港を選択するか?というように考えてみてください。

航空券(物価)が安い

 同じように乗り継ぎをして移動をするのなら当然安いほうが有利になります。
世界の国々が同じ舞台で勝負するわけですから、物価の高い日本はかなり不利になります。

滞在施設が充実している

 ハブ空港での乗り継ぎを行う場合、空港内で数時間~半日以上滞在することが考えられます。
航空機の乗り換えは、新幹線や電車の乗り換えとは違ってすぐには乗り換え便が出発することはあまりありません。
この乗り換えの時間をいかにストレスなく楽しくすごせるかが重要になります。
かなりの時間待たないといけないとなっても、休憩所やショッピングモールや映画館、ビジネス客であればパソコンの電源が使えたりインターネットが使える環境がある場所であれば負担はかなり減ります。
また、深夜の便に乗り継ぐとなれば簡易宿泊所などの充実も重要なポイントになります。

航空会社が発着時間を自由に決めることができる

 機能的なハブは収束と発散がタイミングよく行われるようにフライトスケジュールが組まれています。
つまり、一定の時間帯に各地方空港からいっせいにハブ空港に乗客を集め、集めきったところでまたいっせいに各地へ飛んでいく、そしてこのサイクルが繰り返されるというのがよいハブのあり方となります。
この場合、乗客はハブ空港での滞在時間を短くでき効率的に移動できます。

国際線と国内線(または近距離国際線)の路線が多い

 日本の場合、国内移動であればある程度直行便がありますし、直行便がなくても新幹線やバスなどその他の交通機関が充実しています。
しかし海外まで移動する場合では、国際線の空港までの移動が不便でそこが大きな問題になっています。
理想としては国際空港へ行くための国内線が充実しており、国際線の就航地も豊富であるべきです。

スポークの中心に近い

 国際間の移動ではある程度の時間のロスは許容されます。
10時間で到着するのと11時間で到着するのとではそう大きな違いとはみなされないでしょう。
ただし、これを航空会社の立場で考えると少しずつ運航経費や時間的なロスが積み重なっていきます。
そういう点では、ハブ空港の位置はできるだけ各スポークからの中心に近いほうがいいといえます。

24時間運用できる

 国際線は当然世界中とつながるわけですがそうなると空港の運用時間を区切ってしまうのは大変もったいないことです。
北米まで東に10時間以上、ヨーロッパまで西に10時間以上かかるとなると、1日はたった24時間しかないわけですから連続して運用することが有利なのは当然です。
他の交通機関のない深夜に到着してもしょうがないと考えがちですが、大切なのは出発地の時間と到着地の時間なのであって、その間のハブの部分では効率的な乗り継ぎ便さえあれば深夜であっても関係ないのです。
24時間の運用になると深夜の騒音問題が発生するため、事実上、海上の飛行場でしか24時間運用は行えません。

長距離ジャンボが離着陸できる

 国際ハブを作るとなると当然大型の国際長距離便が離発着できる長さの滑走路が必要です。
最低でも3000mは必要で、今後のA380などの超大型機の増加を考えると理想的には4000mは欲しいところです。

貨物のバックヤードが大きい

 貨物といえばフェデックスなどの貨物便を思い浮かべるかもしれませんが、貨物は旅客用の便の乗客の足の下にも積載されています。
この貨物は乗客の荷物とは関係のない貨物がかなり含まれていますので、これを貨物の集積所に同時に送れると便利なわけです。
ということは乗客が集まるハブ空港が同時に貨物の集まるハブ空港であれば非常に効率がいいわけです。
というわけでよいハブ空港であるためには大きな貨物の集積所が必要になります。

着陸料(空港使用料)が安い

 着陸料が安いことは当然航空会社にとってはありがたいことです。
その空港に便を集中させるわけですから着陸料の差は航空会社の負担に大きく影響します。
また、着陸料が安いことは利用客の施設使用料などの負担を減らすことにもつながります。

都心部から近い必要はあるのか?

 現在、日本のハブ空港としてソウルの仁川空港が機能しています。
ソウル市街などへ行くための目的地の空港ではなく、国際線へ乗り継ぐためのハブ空港として考えた場合、乗り継ぎでは仁川空港から外へ出ることはあまりありません。
このことから単純にハブ空港の機能として考えた場合、都心部から近い必要はないということがわかります。
ただ、ハブ空港自体は国際、地方と多くの路線と繋がっているため直行便が充実していることと、空港施設の従業員や航空会社の従業員、乗務員の勤務地となるため、都心部と近いことは空港を活性化させる大きな要因になります。

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